去勢手術・避妊手術の方法について

去勢手術・避妊手術の方法について

当院では、去勢手術・避妊手術の際に超音波凝固切開システム(ソノサージ)による手術が可能です。


去勢手術・避妊手術では、どちらも靭帯・血管などの遮断が必要となります。一般的にはこの遮断に縫合糸による結紮が使用されています。縫合糸は体内で溶けて吸収される吸収性縫合糸、吸収されずに体内に残る非吸収性縫合糸があります。これらの糸は手術内容・結紮部位によってそれぞれ使い分けられています。


しかし、近年この縫合糸に関連した病気の発生についての報告がなされています。縫合糸反応性肉芽腫という病気で、手術に使用した縫合糸に対して身体が反応してしまうことにより起こります。特にダックスフンドなどの犬種で起こりやすいことが報告されています。症状は、場所により異なりますが、赤く腫れる、しこる、潰瘍など身体に穴が空いてきてしいます。治療には腹腔内の異物(縫合糸)を取り除かなくてはいけないこともありますので、お腹を開く手術が必要となる場合もあります。この縫合糸反応性肉芽腫は特に絹糸を使用した場合に起こりやすいという報告がされています。当院では手術で縫合糸を使用する際には、極力免疫反応が起こりにくい縫合糸を選択し使用しています。この糸は術後約6ヶ月ほどで体内に吸収されるため、体内に異物として残りません。


しかしながら、それらの糸を用いても稀に免疫反応を起こしてしまう動物がいます。そのため、動物たちの負担を少しでも減らすために、当院では冒頭の超音波凝固切開システムによる手術も行っています。これは超音波による摩擦で血管をシーリングすることで、縫合糸を使用しなくても血流を遮断することができる方法です。この方法では腹腔内に糸を残さずに手術が可能なため、縫合糸反応性肉芽腫の発生を防ぐことができます。


シーリングシステムを使用することで、結紮による手術と比較して手術時間が短縮できるというメリットがあります。動物の負担を減らすことができるため、これは非常に重要なことです。


また、シーリングシステムによる手術を用いた場合では、糸を用いた場合と比較して術後の炎症反応が少ないという報告もなされています。
(この論文は院長山下が勤務していた藤井動物病院:藤井康一院長による発表され、獣医麻酔外科学会の最優秀論文賞を受賞しました)

シーリングシステム使用によるメリット

・出血リスクの減少
・麻酔時間の短縮による手術リスクの減少
・体内に異物を残さない手術が可能
・術後炎症反応が少ない